Dragon Quest 3 − Togethe −

― むっつりスケベ ―

   

アッサラームの名物なだけあって、ベリーダンスはすごい人気だった。

客席はすべて満席で舞台に向かってたくさんの歓声が飛ぶ。
一番人気の踊り子はビビアンで、彼女がステージに出るだけで会場全体が震えるほどの拍手が起こった。

   

   

   

「ベリーダンスすごかったねー。」
「はい。ほんとアッサラームに寄ったらベリーダンスは見るべきですね。」
「だろー、見てよかっただろっ。」
「うんっ。」「はいっ。」
アリスとイルは上機嫌で同時に頷いた。

   

アッサラーム劇場を出てもまだ耳の奥がグワングワン鳴っているようだ。

「ラヴィちゃん、ベリーダンスすごかったねー。」
アリスがオレの横に来てさっきと同じ言葉を言う。
「そうだな。」
オレがそう答えるとアリスはさっきの踊りを思い出すように、
「ビビアンの踊り、ほんとすごかったね。すごくキレイですごく見入っちゃった。さすがトップスターだよね。」
アリスが昂揚しているとオレとアリスの間に割り込んでカルトが、
「だけどビビアンのあの胸、絶対詰め物だぜ。」
「えっ?そうなの?」
カルトの言葉に驚くアリス。
「なんでカルトさん、そんなことわかるんですか?」
そこへイルも加わり、
「そりゃ見ればわかるって。あれは形が良すぎた。」
イルの問いに答えるカルトに、
「お前は何を見てたんだ。」
と呆れるとカルトは、
「なんだよ、ラヴィだって見てただろ。」
「お前と一緒にするな。」

そんなオレとカルトの後に下がり、アリスとイルが、
「アリスちゃん、詰め物だって気づきました?」
「うんん、全然。だって・・・詰めれる隙間なんてなさそうだったよね。」
「ですよね。それもプロの技なのでしょうか。」
「踊り子さんてすごいねー。」

・・・一体、何の話をしてるんだ。

   

   

   

そんな会話を繰り広げながら真っ直ぐ宿屋に帰るはずだったのだが、
噴水の近くに来るとカルトが、
「悪い、俺、約束あるから。」
と離れていった。

カルトの行く先には昼間カルトが声をかけた美人が立っていて、
「ほんとに会う約束してたんだな。」
振られたのをごまかす言い訳だと思っていた。

美人と合流したカルトはオレ達に向かってVサインをして美人を連れて戻ってきた。
「俺、これから美人のお姉さんと一緒するから先に宿戻っててくれ。」
そんなこと言うためにわざわざ戻ってくるな。
カルトがニヤニヤといやらしい笑みを浮かべている横で女はオレ達に向かって挨拶をしてきて、
「そっちの坊やもステキね。・・・どう?あなたも一緒にぱふぱふしない?他の子紹介するわよ。」
「・・・・・・。」
・・・そういう女とわかって声をかけたのか?
とカルトに目で問い掛けたが、カルトは始終ニヤニヤしていた。
「うふふ、気持ちいいわよ。」
微笑を浮かべてそんなことを言ってくる女にオレは、
「・・・さっさとそいつを連れて行ってくれ。」
カルトにはそのまま帰ってこなくていいぞと胸中で呟く。

   

そんなやり取りを後で聞いていたアリスとイルが、
「ぱふぱふってなんだろ?」
「初めて聞きましたー。なんだか柔らかそうですねー」
「気持ちいいみたいだけど・・・。」

・・・それ以上口にするのはやめてくれ。

その会話が聞こえていたのか
「あらー、かわいらしいお嬢さん達ね。ぱふぱふを知らないの?」
と妖艶な笑みを浮かべて女が話に加わった。
「知らないとおかしいことですかー?」
と女に聞くイル。
知らなくても全然おかしくないと思うが、
「そうねー。お嬢ちゃん達なら知らなくても仕方ないわねー。もう少し大きくなってからの方がいいわね。」
「むっ、イル達16です。」
とムキになるイルに女はうふふと笑みを浮かべ、
「年の話じゃないのよ・・・。大きくなってからそっちの銀髪の子にしてあげるときっと喜ぶわよ。」
オレを話に巻き込むな・・・
「ラヴィちゃんが喜ぶこと?」
首を傾げるアリスとイル。それに、
「あー、ラヴィも好きそうだよなー。」
とカルトが同意。
誰がだ。だからお前と一緒にするな。
「銀髪の子に大きくしてもらった方が早いかもしれないわね。」
と更に女が口にする。
「大きくしてもらう?」
「何をですか?」
ますますわからないといった風にアリスとイルはお互い顔を見合わせた。
・・・はぁ。
「帰るぞ。」
と告げその場を離れると、
「あ、ラヴィちゃん。・・・待って。」
「わっ、置いて行かないでください。」
とアリスとイルが追いかけてきた。

その場に残ったカルトと女がその後、どこに行ったかは知らない。

   

   

   

宿に着き、部屋に行こうと階段を上っている後から、
「ねぇ、ラヴィちゃん、ぱふぱふって何?」
とアリスが話をぶり返してきた。
年頃の娘がそんなことを男に聞くなと思うが、イルまでもが「教えてください。」と言ってくる。
「・・・・・・。」
そんなもん説明できるか。

しかし答えを期待するようにオレを見るアリスとイルは、答えるまで同じ質問をしてくるだろう。
公共の場でそれは勘弁してほしい。
カルトが夜に女と会う理由を察していればわかることだと思うのだが、この様子じゃわかっていないだろうな・・・。

どう答えようか悩んだオレは、
「風俗・・・は知ってるよな?」
「うん。」
「男の人がお金で女の人を買うところですよね。」
それぐらいは知ってますよ。と頬を膨らませるイル。
「その中の一つだ。」
「えっ!?」
と声をあげたアリスとイルの顔が瞬時に赤くなる。
どういう事かわかったらしい。

「えっと・・・あ・・・っと・・・」
顔を真っ赤にしてしどろもどろになったアリスは、「ごめんなさい。」と頭を下げると、
「あたし達、もう寝るね。」
おやすみなさいと言いながらイルの手を掴んで急いで部屋へと入っていった。

バタンッと扉が閉まるのを見て、
「オレも寝るか。」
と自分の部屋に入った。

   

   

   

翌朝、隣のベッドにカルトの姿はなかった。
帰らなかったのか?それはそれで構わないが・・・

支度を終え食堂に行くと、隅のテーブルに顔をぶっつぶしたカルトの姿があった。
近づき、いつ戻ったのか聞くと「夜中・・・。」と答えが返ってきた。
うな垂れている様子にどうしたんだと聞くと、
「どうしたもこうしたも騙されたんだよ。ついて行ったら暗闇で男が・・・全身グキグキっと・・・」
「ご愁傷様だったな。」
ジェスチャーで表現してみせたカルトは再びテーブルにぶっつぶして、
「気持ちよかったんだけどな・・・。」
そこへ、
「カルトさん、サイテーです。」
カルトがバッと顔を上げると食堂から部屋へと続く階段にアリスとイルの姿があった。
2人はちょうど下りてきた所で、カルトはどういうことだとオレに目を向けた。
「軽く説明しただけだ。」
さらっと言ってやるとカルトは事態を察し、
「あー、違うんだ。俺は別に何も!」
と2人に弁解をしに行くが、
「カルトさん、言い訳は見苦しいですよ。ラヴィさん、おはようございます。」
「ラヴィちゃん、おはよう。」
「あぁ。」
「いや、聞くだけ聞いてくれ!俺は!」
オレと挨拶を交わした2人にカルトは必死に弁明しようとするが、
「カルトくん、あの・・・今日はちょっとカルトくんと話したくないな。」
「そんな!?アリスちゃん!?」
控えめだがはっきりそう言ったアリスにショックを受けたカルト。
まぁ、結果はどうあれ自業自得だよな。

ショックを受けるカルトをその場にアリスとイルは朝食を貰いに行った。

これに懲りて女に声をかけるのを自重してくれればいいんだが・・・。

   

あとがきまがい

むっつりスケベ?誰が?
ラヴィちゃんはむっつりではないはずです。(笑

書いてて楽しかったのですが、途中からこれはいいのか?と悩んでみた。
アリスとイルはどこまで箱入りなんだろう・・・(脳

連続投稿です。
年末年始に50Qもアップしたいと思います。
ネット繋がってない間にがんばって書いてみた。

2007.12.13

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