Dragon Quest 3 − Togethe −

― 町の人々 ―

   

「あら、おかえりなさい。」
「うん、ただいま。」
そう言ってオレ達を出迎えてくれたのはアリスの母親だった。

   

   

「さっ、ラヴィちゃんも。」
とおばさんに促がされて中に入ると、
「あら?他の子はいないの?」
とおばさんは他に誰も居ない外を見渡した。
「うん。カルトくんとイルはお家に顔を出すって行っちゃった。」
アリスの言葉におばさんは「あら、そうなの?」と残念そうだ。

まぁ、家族が居るんだから戻った時ぐらい無事な姿を見せるべきだろう。

「明日の朝に迎えに来てくれるって。」
「そう。・・・ラヴィちゃんは神父様にお会いしなくていいの?」
おばさんはお茶の用意をしながらそう聞いてきた。

孤児のオレの面倒を見てくれたのは教会の神父なのだが・・・

「オレが行っても邪魔になるだけだろ。」
「あら、でも神父様、ラヴィちゃんが旅立ったって聞いて、気にしていらしたわよ。・・・元気な姿見せてらっしゃい。」

教会を出てすでに数年たっているのに、どんな顔して会いに行けばいいんだ?

「アリスもラヴィちゃんについて行ってきなさい。・・・ついでにお父さんのお墓参りしてきて。」
「えっ?・・・あっ、うん。」
いきなり話を振られたアリスは、
「ラヴィちゃん、行こっ?」

・・・行くしかないのか。

   

   

「いってらっしゃい。」
おばさんに送り出されアリスと並んでアリアハンの町を歩く。

   

教会に続く大通りを歩けば、
「おっ、アリスちゃん。」
「里帰りかい?」
「相変わらずかわいいね。」
と見知った住人がアリスに声をかけてくる。
アリスはそいつら一人一人に「こんにちは。」と挨拶を返す。
そしてアリスの横を歩くオレにも、
「おぅ、ラヴィ。アリスちゃんを独り占めするなよ。」
「アリスちゃんのこと泣かせてないだろうな。」
「ラヴィ、アリスちゃんに花を買ってやれよ。花。」
「わっ、わっ、わっ。」
そいつらに対し、何故かアリスが慌てる。

・・・・・・。

「そこの花を包んでくれ。」
とオレは店先に並ぶ花を眺めて花屋の店員(男)に言った。
「ラ、ラヴィちゃん!?」
アリスが慌ててオレの腕を掴む。
オレはアリスに顔を向け、
「おじさんの墓参りに行くんだろ?」
墓参りに手ぶらでいくのもどうかと思う。
オレの言葉にアリスは腕を掴んだまま「うん。」と頷いた。

   

「どうせなら薔薇にしろよなー。」
とぶつぶつ言う店員は作った花束を、「はい、アリスちゃん。」と手渡した。
「墓参りに薔薇は場違いだろ。」
支払いをしている間、淡い色で作られた花束を受け取ったアリスは、花束に顔をうずめて匂いを楽しんだ。
そんなアリスを見て店員は、
「やっぱアリスちゃんは目の保養になるよなー」
と鼻の下を伸ばしていた。

相変わらずアリスは町の人間に好かれているようだ。
それもアリスの人徳なのだろうが・・・。

   

   

教会に顔を出し忙しそうな神父に顔を見せた後、オレとアリスは教会裏の墓地へと足を運んだ。

   

   

一際立派な墓は勇者オルテガに対するアリアハン国王の配慮だ。

墓に花を添えたアリスは手を組んで祈りを捧げる。
オレもアリスに倣うべきなのだろうが、

ここにオルテガは眠っていない。

勇者オルテガは火山の火口に落ちたのだ。
眠る者の居ない墓など無意味だと思うのだが、形だけでも冥福を祈りたいのだろう。
その証拠にオルテガの墓参りに来る人は多いようで、花が絶えたことはなかった。

   

勇者オルテガはアリアハンの出身だが、オレの知る限りアリアハンに居る事は滅多になかった。
アリアハンの住人でさえオルテガの姿を見たことない人は多数いるのだ。
そんな中、オルテガと知り合うことができたオレは運がよかったのだろう。

アリスに出会わなければオルテガに会う事もなかったはずだ。

   

「あたし、お父さんみたいになれるかな。」
墓に目を向けたままアリスがそう口にする。
父親の影を追うのは構わないが、
「・・・アリスはアリスだろ。」
「うん。・・・でもお父さんみたいに強くないよ。強くないのに魔王を倒せるのかな。」
アリスが弱気になるなんて珍しいな。
まぁ、オルテガがアリアハンのみならず世界中に名を馳せている事を考えれば無理もないのかもしれないが。
「アリスは一人じゃないだろ。オレ達も一緒だ。」
始まりはどうあれ、今はアリスの旅に同行しているのだ。
今さら投げ出すようなことはしない。
それはカルトとイルも同じだろう。
「ラヴィちゃん・・・。」
不安そうな顔を向けてくるアリス。
「そんな顔をするな。アリスのことはオレが守るさ。」
だからアリスは真っ直ぐ前を向けばいい。
いつものように笑顔でいればいい。
「わっ、わっ、わっ。」
不安そうな顔を一変してアリスは慌てた。

   

   

   

夕飯をご馳走になった後、部屋で休んでいたのだが、

   

深夜、目が覚めた。
身体が野宿に慣れてしまったらしい。
酒場も閉まっているだろうから水でも飲むかと、そっと階段を下りていくと、
「あら、ラヴィちゃん眠れないの?」
リビングでおばさんが起きていた。
「・・・寝ていたけど目が覚めた。」
「あらあら、・・・じゃ、ホットミルク飲む?それともお酒の方がいいかしら?」
クスクス笑いながらキッチンに向かうおばさん。
「どっちにする?」と言われ、
「・・・できれば酒で。」
「そうよね、ラヴィちゃんはアリスと違ってお酒飲めるものね。」

   

「うれしいわ。子どもと一緒にお酒を飲むのが夢だったのよ。アリスはお酒飲めないし。」
と言いながらおばさんはコップになみなみと注いだ酒をオレに手渡した。
「ラヴィちゃんがお酒飲めてよかったわ。」
と言うおばさんのコップにもなみなみと酒が注がれている。
アリスは酒は一滴も飲めないが、おばさんはかなりの酒豪だった。
「いつも義父さんと二人なんですもの」
と言うおばさんは既に2杯目に手を伸ばしている。

・・・さすがに早すぎだろ。

   

「ラヴィちゃん、たまにはこうして帰ってきてね。」
まだ一杯目のオレに対し、おばさんは既に一瓶空けていた。
「・・・あぁ、たまには帰らせるよ。」
「ラヴィちゃんも一緒によ。また一緒にお酒が飲みたいわ。」
ふふふと笑うおばさんは一瓶空けたにもかかわらず素面だった。
酒を飲むのは口実で無事な姿を見せろということなんだと思うが・・・。
考えていることが顔に出たのか、
「あら、旅のことは心配していないのよ。どんな旅をしているのかしらって気にはなるけど。」
娘が魔王討伐っていう危険な旅に出て心配していないって・・・
「あの子一人だったら心配だけど、ラヴィちゃんが一緒だもの。」
だから大丈夫よ。と笑うおばさん。
「・・・・・・。」
無茶をさせるつもりはないが・・・。

   

「なんじゃい、ラヴィも一緒か。」
「あら、義父さん。」
祖父さんが起きてきた。
「わしにも一杯くれんか。」
と祖父さんは空いている椅子に腰掛けた。
酒を受け取った祖父さんは、
「どうじゃラヴィよ。旅の方は?」
「・・・・・・順調かどうかすらもわからない。」
魔王討伐の旅のはずだが魔王の魔の字にすらたどり着けていないのだ。
そう言うオレに祖父さんは豪快に笑いながら、
「大丈夫じゃ、なんてったってアリスはわしの孫じゃからな。・・・それにラヴィもついておるしの。」
「義父さん、もう少し声を抑えないとアリスが起きますわ。」
指摘され、「おお、そうじゃった。」と口を手で塞ぐ祖父さん。
「・・・・・・。」

なんだってこの家族はそんなにオレのことを信頼するんだか・・・
おじさんにも旅立つ時アリスのこと頼まれたな。

   

   

   

「アリスちゃん、ラヴィさん、迎えにきましたよー。」
翌朝、イルとカルトがやってきた。
「おばさん、相変わらず綺麗っすね。」
「カルトくんも相変わらずねー。」
とカルトの言葉を笑い飛ばすおばさん。
「わっ、わっ、ごめんね。もうちょっと待って。」
と階段を駆け下りてくるアリスは急いで洗面所へと向かった。
アリスが準備に手間取るのも珍しいな。
「あの子、夜眠れなかったのかしら。」
結構早い時間に寝たと思うのだが・・・。
「イルも昨日の夜なかなか眠れませんでしたー。寝たら朝までぐっすりだったんですけど。」
「ダメだな、イル。夜更かしは肌の大敵だぞ。俺なんか朝までぐっすり。」
「カルトさん、羨ましいです。」
・・・カルトはともかく、イルも野宿が身体に馴染んだのか。
・・・ってことはアリスも、だろうな。
おばさん達と酒を飲み交わしていた時、起きていたのかもしれないな。

   

   

「それじゃ、行ってきまーす。」
と家を出るオレ達をおばさんは玄関まで見送りに出てくれた。
「みんな気をつけてね。・・・アリス、無理はしないのよ。それとラヴィちゃんの言う事きちんと聞くのよ。」
「えっ?うん?」
おばさんの言葉に返事をしたアリスからおばさんはオレの方に向き、
「ラヴィちゃん、アリスのことよろしくね。」
「・・・・・・あぁ。」
アリスももう成人を迎えたのだから、そんなに過保護になる必要もないと思うが、やはり危険な旅に心配があるのだろう・・・。
しかしおばさんは楽しそうに
「なんなら、旅の途中にいい場所があったらそこで式をしてもいいのよ。ラヴィちゃんならお父さんも反対しないもの。」
「・・・しき?」
「わっ、わっ、お母さんっ!?」
なんのことだと思っている横で、慌てるアリスにおばさんはふふふっと笑った。

   

あとがきまがい

アリスとラヴィは町の人に公認。
母にも祖父さんにも公認。
知らぬは本人だけ〜
だけどさりげなくセリフが出てくるのは家族だと思ってるから〜

・・・・・・タチ悪いねぇ。

   

投票ありがとうございます。
無期限だけど、途中結果の発表〜

アリス 5票
「かわいいー」
「ラヴィ、もっとアリスに愛を…示してあげて!w 」

アリス「わっわっわっ、ありがとうございます(ぺこり)」

ラヴィ 3票

ラヴィ「・・・・・・。」

イル 1票

イル「イルにも票が!?うれしいですー。」

カルト 0票

カルト「ガーン|||俺に票がないなんておかしいだろ?」

投票は引き続き受け付けておりますので、
よろしくお願いします。
誰が1番に100票にたどり着くかな〜

2007.09.28

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