Dragon Quest 3 − Togethe −

― メダルの価値 ―

   

「あっ、またあったよ。」
とアリスが手にしたのは直径2cmにも満たない銀色をしたコイン。
「わっ、アリスちゃんすごいです。」
とイルがトテトテとアリスに歩み寄って、アリスの手の中のコインを見つめた。
「これで何枚目だっけ?」
と聞くアリスにイルは小さな袋を取り出して、
「えっとですね・・・1,2,3,4・・・・・・12枚です。」
「もうそんなに集まったんだね。」
全部で何枚あるんだろうねと話す二人に、
「二人とも何してるんだ?」
とカルトが二人の手元を覗き込む。
「なんだそれ?」
と聞くカルトにアリスとイルは顔を見合わせて、

「わかんない。」

・・・・・・。

「えっとね、アリアハンにいるときからたまに見つけてたの。お城のタルの中とか、学者さんの部屋のタンスの中とか。」

タンスの中って・・・漁ったのか?

「みんなに聞いても知らないって言うから貰ってイルと二人で集めてたの。」
アリアハン以外にもあるなんてびっくりだねー。とアリスとイルは笑った。

・・・知らない物を集めるなよ。

へー。って相槌を打つカルトは、
「ラヴィ、知ってるか?」
と話を振ってきた。
「・・・小さなメダルだろ。」
「わっ、ラヴィちゃん知ってるの!?」
アリスとイルが期待の目を向けてきた。
「アリアハンの南にある井戸の中に小さなメダルを集めてるおっさんが住んでる。」
オレの説明にアリスとイルは、
「井戸の中?」
「住んでるんですか?」
と信じられないといった顔をした。

まぁ、普通は信じないよな。
オレも初めて見た時は自分の目を疑った。

「なんでそんなこと知ってるんだ?」と聞くカルトに
「修行ってことで井戸ん中に落とされたんだよ。」
あの修行がなんの役に立つのかは不明だが。

「あたし達以外にも集めてる人いるんだー。」
「ライバルですね。アリスちゃん負けられませんよ。」
と力むイルに、
「集めてるつっても、見つけたメダルを持って行ったら何枚かごとに景品と交換してくれるぞ。」
「景品ってなんですか?」
「そこまでは知らないが、10枚あるんだったらなんかと交換してくれるんじゃないのか?」

そのためには一度アリアハンに戻らないといけないわけだが・・・。

どうしよっか?と話す二人は、メダルの用途について考えた。
「せっかく集めたのを他の人に渡すのは悔しいですよね。」
「うん。でもあたし達はわからないまま集めてたけどおじさんは必要だから集めてるのかもしれないし、あたし達がこのまま持ってても荷物になっちゃうよね。」
「そうですけど・・・。とりあえず景品だけでも見てみますか?」
「うん、そうだね。それから考えよっか。」

   

   

   

そう言うわけでアリアハンに戻ったオレ達は南の井戸の中へとやってきた。

「なんだって井戸の中に家なんか建てたんだ?ってかよく建てれたよな・・・。」
と井戸の中に建つ家を目前にしてカルトは呆れていた。
「きっとただ者じゃありませんよ。」
とまるで敵地に乗り込まんとひのきのぼうを構えながらイルは返した。
「アリアハンにずっと住んでたのに、こんなところがあるなんて知らなかった。」
と周りをキョロキョロ見渡すアリス。
まぁ、普通の人間は知らないだろうな。井戸の中なんて。

   

「ここはメダルの館!わたしは世界中に散らばる小さなメダルを集めているメダルおじさんだ。」
扉を開け中に入るとカウンターの向こうから中肉中背のちょび髭を生やしたおっさんが両手を広げてオレ達を招きいれた。
「メダルを集めた枚数に応じて君達の役に立つものと交換をしてあげよう。」
「景品って何があるんだ?」
ちょっと興味を示したのかカルトがカウンターに肘を乗せながら聞いた。
おっさんはカルトを上から下まで観察すると、
「うん、君は武道家だね。それなら疾風のバンダナとか役に立つんじゃないかな。これは70枚集めたら交換だね。」
「70枚か・・・小さなメダルってすぐ見つかるもんなのか?」
「どうだろね。いろんなところにあるから探したら見つかるんじゃないかな。タンスの中とかつぼの中とか・・・。」
なんでタンスの中なんだよ・・・
「めんどくさそうだな。」
とやる気をなくしたカルトにおっさんは耳打ちで、
「そう言わずに、・・・ゴニョゴニョゴニョゴニョ。」
「まじで!?」
何を言ったのか目をギラギラさせるカルトにおっさんは無言で頷いた。
「わかったぜおっさん!俺が小さなメダル集めてやるよ。」
いきなりやる気になったカルトの横に並んでアリスとイルが、
「あの、あたし達12枚集めたんですけど・・・。」
と小さな袋から銀色のメダルを取り出した。
「おお!12枚も!すごいですぞ。・・・5枚集めた褒美にとげのムチと、10枚集めた褒美にガーターベルトと交換しますよ。」
「えっ、二つも!?」
「加算方式ですので、あと8枚集められたら刃のブーメランと交換しますよ。」
「アリスちゃん、交換しましょう!」
最初は渋っていたイルが手のひらを返してアリスにそう切り出した。
「イル、いいの?」
と聞くアリスにイルは目を輝かせながら、
「はい。とげのムチがあったらイルの攻撃力もあがります。」
武器をひのきのぼうから変えたいらしいが・・・。
魔法使えよ。
「じゃぁ、交換お願いします。」
と小さなメダルを出す二人の前におっさんはとげのムチとガーターベルトをカウンターに置いた。
「また見つけたらぜひ持ってきてください。」

   

「これでイルもパワーアップです。」
と上機嫌なイルは手に持ったとげのムチをしならせた。
だから直接攻撃じゃなくて魔法を使え、魔法を。
「これ、どうしよう?」
とアリスはもう一つの景品、ガーターベルトを手に持って困っていた。
オレ達には必要ないんだが・・・
「アリスちゃん、身に着けろよ。そしたらセクシーギャルの仲間入りだ。」
我ながら名案だとばかりにカルトがそう勧める。
「お前な・・・。アリスが着けてどうするんだ?」
アリスの服装は青いワンピースタイプのシャツを腰の位置でベルトで止め、下はタイツをはいてマントを羽織る旅装束、ガーターベルトを着けても見えないと思うんだが・・・。
呆れるオレにカルトは、
「なんだよ、見えなくても着けてるって思うだけでこうムラっと。ほんとはチラっと見えるのがいいんだけどな。」
「お前は変態親父か。お前の欲望のためにアリスを巻き込むな。」
「なんだよ、ラヴィだって好きだろ!」
「何がだ!」
「えっと・・・。」
オレとカルトのやり取りに困り果てるアリスにオレは、
「アリス、着けなくていいからな。」
「えっ?」
「なんでだよ!自分の彼女がこういうの着けてくれてるだけで嬉しくならね?」
「だったらアリスじゃなく、自分の彼女に着けてもらえ。アリアハンにたくさんいるだろ。」
「残念。みんなとはアリアハンを出る時に涙を忍んで別れたから今の俺はフリーさ。」
だから今はアリスちゃんに!と言うカルトからオレはアリスを隠すように背中に回した。
「えっと・・・ラヴィちゃん?」
諦めないカルトに言い返すオレの後でアリスはどうしようと困っていた。
「アリスちゃんだって女の子なんだから、こういうの着けたがる年頃なんだよ!」
「それはお前の願望だろ?アリスにはまだ早い。」
「早くないって!アリスちゃんは美少女だからこれをつけて更にパワーアップ!」
「アリスは今のままで十分だ。」

そのやり取りを見ていたイルがとげのムチを手にしたまま、
「なんだかラヴィさん、お父さんみたいですね。」
と口にするが、オレはカルトとのやり取りでその言葉を聞いていなかった。

   

あとがきまがい

ラヴィちゃんはアリスちゃんの保護者です(プッ
魔の手(カルト)からアリスちゃんを守ります。
これからも存分に守ってくれ(笑
そしてツッコミ役はイルw

『アリスとイル』と打とうとするとどうしても『アリストテレス』を思い出す罠。

同盟に参加するためにキャラ設定を見たら、ラヴィが17歳だったのに驚いた。もうちょっと年上の方がよくね?

2007.09.03

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