Dragon Quest 3 − Togethe −

― エルフ ―

   

「こんなの悲しいよ。」
ノアニールの西の洞窟の最奥、地底湖で見つけたエルフの秘宝−−−夢見るルビーと一通の手紙を手にしてアリスは涙を流した。

   

   

   

ノアニールの街の呪いを解いてもらうためエルフの里を訪れたのだが、エルフの女王は娘のアンが人間に騙されたと思っておりオレ達の話を聞こうとしなかった。
他のエルフもオレ達に関わりたくないらしくオレ達を避けていたのだが、カルトが声をかけると知っていることを全て話してくれた。

・・・・・・。
まぁ、カルトがナンパに失敗したことないのは知っているが・・・。
カルトはエルフ受けもするのか?

カルトがナンパしたエルフの話では、アンはエルフの秘宝を持ち出して人間の男と駆け落ちをしたらしい。それっきりアンが帰らないから女王はアンが人間に騙されたと思い込み、ノアニールの街に呪いをかけた。
関係ない街の人間には迷惑な話だ。
そして、二人揃って里の南の洞窟に向かったのが二人を見た最後だと言う。

まさか洞窟で暮らしているとは思えないが、何か手がかりがあるのではと南の洞窟に向かうことになった。

   

   

   

・・・その洞窟の一番奥の地底湖で見つけたのが、夢見るルビーと一通の置手紙なのだが、

「こんなの悲しいよ。」
と涙するアリスが持っている手紙には、

−−−お母様先立つ不孝をお許し下さい。
   私たちはエルフと人間、この世で許されぬ愛ならせめて天国で一緒になります……。
          アン−−−

と書かれていた。
つまり二人はこの地底湖に身を投げたってことなんだと思うが・・・
駆け落ち先が死ってのはあまりにもやるせないな。

「どうして二人は死を選んだのでしょう?駆け落ちしたのなら誰も知らないところで二人で暮らせばいいのに、こんな近くで死ぬなんて・・・。」
イルは二人の死を悲しむよりも二人の行動が解せないという顔をしていた。

二人が死を選んだ理由、それは当事者の二人にしかわからないだろう。
オレ達がどれだけ推測してもそれはただの推測でしかない。

「まぁ、種族の違いってのが一番の問題だったんじゃね?」
「どうしてですか?」
カルトの言葉に疑問を浮かべたイルに、
「エルフってのは人間にとって珍しい種族だ。誰も知らない所に行っても人間社会で暮らしたらエルフは見世物扱いさ。それにエルフは人の10倍は長く生きるって言われてる。人とエルフが一緒になるのは現実的に難しいだろうな。」
「だからって死ななくてもいいじゃないですか。死んだら何もないのに・・・」
「それだけ二人の愛が深かったってことだろ?」
「・・・そんなのわかりません。」
納得しないって顔でイルは口を尖らせた。

エルフと人の時間の流れが違う以上、共に暮らしても人が先に命を終える。
それは避けられぬ運命だ。

「種族の違いってそんなに大きいのかな?」
それまで黙っていたアリスが言葉を洩らす。
「生きてたら辛い事や悲しい事があるかもしれないけど、それと同じだけ嬉しい事とか楽しい事もあると思う。それなのにそれを知らずに死ぬなんて悲しすぎるよ。」
手の中の拳大の赤い宝石を握り締めるアリスにカルトは、
「まっ、二人が何を考えてたなんてわからんけど、人同士でも身分の違いとかあるっしょ?それと一緒じゃね?」
「身分?」
「そっ、一般市民の俺等が王族と一緒になろうとしたらまず王族関係が許さないだろうし、全員を説得するのも難しい。だったら誰も知らない所に逃げちまえばいいと思っても、国を挙げて捜索されるかもしれない。見つかったら引き離されるかもしれない。最悪、王族を誑かしたってことで処刑される可能性もある。」
いまいち想像がつかないらしい二人はまだわからないって顔をしている。
王族はあくまで例え話にすぎないんだが・・・・・・。
カルトは「んー」と少し考えながらオレを見て、何か思いついたらしい。
「仮にアリスちゃんが魔王を倒して世界が認める勇者になった時、ラヴィと結婚するのは難しいかもしれないってこと。」
なんでそこでオレを出す・・・。
「わっわっわっ、カルトくんっ。」
慌てるアリスにカルトは笑みを浮かべながら、
「まーまー。・・・で、いくら二人が好き同士でも、世界中に有名なアリスちゃんと幼なじみでしかないラヴィでは吊り合わないって言い出すやつがいるかもしれない。誰かに反対されたら悲しいだろ?」
「・・・うん。」
頷くアリスを見てカルトは満足げに、
「まっ、そういうこと。」
「・・・お前の話は突飛すぎる。」
そうツッコムと、
「そうかー?結構的を得てると思うんだけどな。」
種族と身分の関係は似たものがあるかもしれないが、オレとアリスの話は関係ないだろ。

   

あんなカルトの話でもアリスとイルはなんとか理解したみたいで、
オレ達は夢見るルビーとアンの手紙を持ってエルフの里に戻った。
手紙を受け取った女王は、二人を許さなかったことを後悔してその場に泣き崩れた。
今になって後悔しても遅いと思うが、あとは女王自身の問題だ。

ノアニールの呪いを解く”目覚めの粉”を受け取ると、オレ達はエルフの里を後にした。

   

   

   

街の入口で粉を風に乗せると街中に降り注いだ。
それまで眠っていた街の人達が目を覚ます。
「これで街も元通りですね。」
動き出した街を見て安心したとイルが言う。
アリスもほっとしているだろうとふっと顔を見ると、何か考えているようだ。
何を悩んでるんだか・・・・・・。

   

   

   

「風邪引くぞ。」
夜、ノアニールの宿のバルコニーで一人空を見上げていたアリスにそう声をかけた。
「ラヴィちゃん・・・。」
アリスの横に立ち同じように空を見上げる。
少しの沈黙の後、そっとアリスは言葉を口にした。
「ラヴィちゃんなら・・・もし二人みたいな立場になったらどうする?」
二人・・・アンと青年のことだろうが・・・
「周りに許してもらえなかったら、駆け落ちするしかないのかなー。」
二人みたいな立場に立つことはないと思うが・・・
「カルトくんが言ってたでしょ?人でも身分の違いはあるって。もしラヴィちゃんが・・・・・・どこかの国のお姫様のこと好きになって、誰にも認めてもらえなかったらどうする?」
身分違いの恋・・・そもそもそんな相手を好きになることなどあり得ないと思うが・・・。
もし仮にそんなことがあったとしたら・・・
「認めてもらえなかったら認めてもらえるまで説得する。」
「説得しても無理だったら?」
「認めてもらえるような人間になる。」
「えっ?」
わからなかったのか聞き返してくるアリスの顔は不思議そうだった。
「相手が姫だったら最高位の騎士になるとかあるだろ。」
オレの言葉にアリスは目を見開いた。
カルトの例え話に例えるなら、アリスが誰からも認められる勇者ならアリスに吊り合うよう自分も名を残せばいい。
もしそれでも無理で駆け落ちしか道が残されていなかったら・・・
「それでも、死ぬことは選ばないだろうな。」
「・・・どうして?」
「死んで幸せになるなんてことはないだろ?」
本人達はそれでもいいかもしれない。けれど周りはどうだ。
アンと青年が湖に身を投げた事で女王は泣き崩れた。その前に二人が帰らなかったことで女王は誤解してノアニールを呪った。ノアニールが呪われたことで困った人間もいたはずだ。
誰かを好きになって、周りが見えなくなるのはどうかと思う。
「アリスだって好きな人間に死んでほしいなんて思わないだろ?」
「うん・・・。」
死を選んだ二人の気持ちなんてわかるわけがないがわかりたいとも思わない。

   

そんなことを考えていると、
「ラヴィちゃんは好きな人いる?」
その声に横を向くと、隣に立つアリスと目が合った。
目が合ったアリスは慌てて、
「わっ、ごめん、なんでもないの。」
「オレは・・・・・・」
「うんん、いいのいいの、なんでもないの。」
アリスは慌てながら、
「もう寝なきゃ、ラヴィちゃんおやすみなさい。」
と急いでパタパタパタッとバルコニーから立ち去った。

   

バルコニーから出て行くアリスの後姿を見ながらオレは、

・・・・・・好きなヤツか、

   

考えたことなかったな・・・・・・。

   

あとがきまがい

ラヴィちゃんにまだフラグが立ってません。
ひどいヤツだ。
でもきっとこれから変わる・・・・・・といいな〜。

今回もまた難産だったorz
どうやら2ndは考えて書くのはよろしくないらしい。
連作なんだから事細々に書かなくてよかったんだなと途中で気づいた。
おかげで何回書き直した事やら・・・(ノwT)

2007.07.28

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