Dragon Quest 3 − Togethe −

― ラッキーマン ―

   

ロマリアには王の趣味か、娯楽施設が存在する。

『モンスター格闘場』

その名の通りモンスター同士が戦う場所で、どのモンスターが勝つかを当てれば金が貰えるってやつだ。
もちろん賭け金が必要なわけだから外れれば当然、損をする。

   

   

   

「ロマリアに来たからには、ここは寄るべきっしょ。」

さも当然とばかりにカルトは率先して格闘場の入口を潜っていった。
その後をアリスとイルが不思議そうな顔をして着いて行く。

「格闘場っておもしろいのかな?」
「どうなんでしょう?」

格闘場を知らない二人はお互いに首をかしげていた。
オレも話しに聞いただけで、実際に入るのは初めてだった。

   

   

格闘場は地下にあり、先に階段を下りていたカルトが、
「おー、こっちこっち。」
と手招きをしてオレ達を呼んだ。
昼間だと言うのに格闘場にはそれなりに人がいた。
仕事が休みかもしくはサボって来ているのかわからないが、大人しか居なかった。
・・・子どもの教育には悪そうだから当然か。

周りを観察しているとカルトが二人に格闘場の仕組みを説明していた。
聞いていた二人はよくわからないって顔をしている。
そんな二人にカルトは苦笑しながら、
「まっ、まずは俺がやってみせるから見てな。」
二人が「うん」と頷いてからカルトはカウンターに肘をついて、次の対戦表を見ながら、
「おっさん。次の試合、キャタピラーに一枚。」
「18ゴールドだ。」
カルトはゴールドと引き換えに券を受け取ると格闘場の見やすい位置に移動した。
その後をオレ達は着いて行く。

   

   

   

おばけありくいが勝ち残った! カルトの予想は外れてしまった!

   

「あー!くそっ!外れた!」
カルトは悔しそうに持ち券をビリビリに破り捨てた。
「カルトくん、外れちゃったね。」
「キャタピラーが一番HP高かったのに!」

カルトが賭けた試合は、キャタピラーとおばけありくいとさそりばちとアルミラージの戦いだった。
早々にさそりばちが敗れ残りで三つ巴になったのだが、キャタピラーが他の二匹の的になりアルミラージと相打ちの状態で敗れた。

おばけありくいの倍率は3倍で、おばけありくいに賭けてたヤツが「よっしゃー」と歓喜の声をあげている。
その周りで外れたヤツらが恨めしそうにそいつを見ているが、当てたヤツは動じていなかった。

まっ、勝ちそうなやつがそのまま勝っては面白味がない。こういう予期せぬことが起こるから賭け事にはまるやつがいるわけで・・・

「ラヴィちゃん。ラヴィちゃんも次の試合の券買いに行かない?」
アリスに袖をひっぱられた。
どうやらアリスとイルは興味を示したのか券を買いに行くらしい。
「そうだな。」
一回は話の種にやってみるのも悪くない。
オレも二人と一緒に券売り場に赴いた。

   

ポイズントード、ホイミスライム、いっかくうさぎ、こうもりおとこの中からオレはポイズントードを選んだ。

   

   

   

ホイミスライムが勝ち残った! ラヴィの予想は外れてしまった!

・・・まっ、こんなもんだろう。
横ではカルトが「あー!また外れた!」と騒いでいる。
アリスも外れたみたいで「外れちゃった。」と残念そうだ。

そんな中、

「わっ、当たっちゃいました。」

とイルが券と一匹勝ち残ったホイミスライムを見比べていた。
「イル、まじかよ!?」
とカルトは悔しそうな羨ましそうな顔でイルの券を覗き込んだ。
オレも後から覗き込む。
確かにイルが賭けたのはホイミスライムだ。
ホイミスライムの倍率は5倍。つまり、90ゴールドの配当金だ。
当たった当人は喜ぶよりも、
「どうしたらいいのでしょう?」
とちょっと困惑気味だ。そんなイルの手を掴み、
「換金だ。換金。そんで次のやつ賭けに行くぞ。」
と勢い込んでカルトはイルを引っ張っていった。

「行っちゃった・・・。」
券売り場に行く二人を見て呟くアリスに、
「カルトも当たるまで諦めないだろうな。・・・長くなりそうだな。何か飲み物取ってくる。」
「うん、行ってらっしゃい。」
とアリスをその場に残し、オレはバーのカウンターに向かった。

   

   

   

カルトとイルの分は後でいいかとオレはコップ2つを両手に持ちアリスの所へ戻った。

のだが・・・

   

「いいじゃん、ちょっとだけー。」
「あの・・・困ります。」
「なんでさー。」

知らない男がアリスに詰め寄っていた。

男は酒瓶を片手に持ち、もう片方の手をアリスの肩に回していた。
まじまじと見れば男の首から上が赤い。
酔っ払いか・・・

「なーいいだろ。嬢ちゃんかわいいんだしー。」
何がいいんだ。
オレは男の前に立ち、
「オレの連れに何か用か?」
普段より数段低い声を出す。
「ラヴィちゃん。」
さっきまで困惑していたアリスの表情がパッと開く。
「あん?なんだお前は?」
男はアリスから手を離すとオレに詰め寄ってきた。
酒の臭いがきつい。
相当飲んでいるのが知れた。
赤い顔をした男は下から舐り上げるように顔を運び、
「俺は今この嬢ちゃんに相手してもらおうと」

バシャッ

「わっ。」
アリスが慌てた声を上げる。
「てっ・・・め・・・、何しやがる!」
コップの中身をぶっ掛けられ男は逆上した・・・が、
オレの無言の睨みに何を感じたか、
「・・・ちっ」
と一つ舌打ちをして去っていった。

男が視界から消え去ってからオレは、
「大丈夫か?」
とアリスに声をかけた。
「・・・うん。」
どこか頼りなげに返事をするアリスをよく見れば、すこし腕の辺りが濡れていた。
男にぶっ掛けたのがアリスにもかかったか。
「・・・悪い。何か拭く物取って」
くる・・・。と言おうとして足を踏み出そうとしたら腕を掴まれた。
振り返るとアリスが俯いてオレの腕を掴んでいた。
掴まれた腕が微かに震えて・・・・・・って、震えているのはアリスの手か。

・・・・・・そうだよな。
勇者と言ってもまだ16歳の女の子だ。
魔物を相手に戦っていても、酔っ払いに・・・それもたちの悪い酔っ払いに絡まれるのは怖いよな。
こんな場所だ。酔っ払いがいても不思議ではないのにこんな状況を予測することを失念していた。

「1人にして悪かった。」
首を横に振るアリスの頭を空いている方の手で優しく撫でた。

震えが和らぐのを感じると無事だったコップをアリスに指し出し、
「飲んだら少しは落ち着くだろう。」
頷いたアリスはコップを両手で持ち、コクコクと中身を喉に流し込んだ。
ぶっ掛けたのがアリス用に持ってきた果汁でなくてよかった。
自分用に持ってきたアルコールが少し勿体無かった気がするが・・・。

半分ほど飲んだアリスは「ほっ」と一息つくと、
「ラヴィちゃん、ごめんね。」
と謝ってきた。
「アリスが謝ることじゃないだろう。・・・もうさっきの事は忘れろ。」
とポンとアリスの頭に手を置き、アリスの手に収まっているコップを取る。
「残り貰っていいか?」
オレも喉が渇いた。
アリスは「うん」と頷いたがすぐさま「あっ。」と声を上げた。
「どうした?」
まだ飲みたかったのか?と思ったがすでにオレは中身を飲み干していた。
「うんん、なんでもない。」
と言う割にはアリスの視線はコップに注がれていた。

   

   

   

空いたコップを近くのテーブルに置くと、
「ラヴィさーん、アリスちゃーん。」
とイルが走って戻ってきた。その後をカルトが、
「もうやべーって。」
と信じられないって顔をしていた。
一体何なんだ?
「おかえり、どうしたの?」
と戻ってきたイルにアリスが聞く。
2人が券を買いに行った対戦はもう終わってるのだが・・・
イルの代わりにカルトが口を開く、
「どうもこうもイルのやつ、スライムに賭けようとしてたんだぜ。」
スライム・・・・・・。またチャレンジャーな。
「俺がやめとけって言ってもスライムに賭けるって聞かなくて、時間ギリギリまで売り場で押し問答してよ。けど結局スライムに全額賭けちまって・・・」
全額?さっきの90ゴールド全部か?
驚くオレの横でアリスが格闘場に目を向け、
「さっき終わった対戦だよね?」
オレも同じように格闘場に目を向ける。
そこには次の対戦のために場所を空けようとピョンピョンと場を去るスライムの姿。
「スライム同士の対戦だったのか?」
「違うって。」
即座に否定するカルトは格闘場の上に掲げられた対戦ボードを指差した。

おばけありくい、ポイズントード、キャタピラー、そしてスライムの文字。
スライムの横には18と数字が記されていた。

18倍・・・イルが賭けたのは90ゴールドだから1620ゴールドの配当金だ。
カルトがやばいと言うのも頷ける。
状況をわかってるのかわかってないのか「イル、すごーい。」とアリスは拍手していた。
カルトはテーブルに肘をついて「俺はもうダメだ。」とうな垂れている。
気持ちはわからんでもない。
そして大当たりした本人は
「次はバブルスライムに賭けますー。」
と宣言した。

   

もうやめとけと思えどもそれは言葉にはならなかった。

   

あとがきまがい

ラッキーマン?
・・・まぁ、深いことは気にしない

・・・orz

書こうと思えば格闘場ネタも書けるもんだなヽ( ´ー`)ノ

ちなみにアリスが賭けたのはいっかくうさぎですw

2007.07.13

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