Dragon Quest 3 − Togethe −

― 王様と女王様 ―

   

「おお!よくぞ金の冠を取り返してくれた。アリスこそ真の勇者! どうじゃ? わしに代わってこの国を治めてみる気はないか?」

   

   

   

誘いの洞窟を抜けロマリアへとたどり着いたオレ達は、ロマリア王に謁見したのだが、
この国王、自分の不手際のせいで盗まれた金の冠をアリスに取り返して来いと言いやがった。
そうしなければアリスを勇者と認めないと言って。
認めさせる必要がないから先を急ごうとアリスを促がしたのだが、
「でも、王様困ってるみたいだし、盗んだ盗賊団の人がこのままロマリアにいたら他の人も迷惑すると思う。」
だから盗賊を止めてもらえるように説得したいと言うアリス。

説得に応じるようなやつが盗賊なんかやるか!

と思ったのだが、オレも盗賊だった。

誤解してもらっては困るが、オレはトレジャーハンターであって、人様の物を盗むような真似はしない。
そんな落ちぶれた盗賊じゃない。

「ダメかな?」と首を傾げるアリスに、
「んー、俺はアリスちゃんについてくぜー。」
「イルはどっちでもいいです。」
そんな二人の返答にオレはため息をつく。

アリスが言い出したら聞かないってことはガキの頃から知っている。
オレが止めてもアリスは一人で行くだろう。そういうヤツだ。
一人で行かせて無茶させては元も子もない。

「危険を感じたらすぐ引き返すからな。」
オレがそう言うとアリスはパッと顔を輝かせ「うん。」と頷いた。

で、シャンパーニの塔にカンダタって盗賊がいることを突き止めて出向いたんだが・・・
カンダタはアリスを見るなり、挙動不審になりアリスの言葉にただ頷くばかり。
アリスが「盗賊止めてくれませんか?」と頼むと、首を縦に振って子分と共に塔から出て行ったんだが・・・

まぁ、無事金の冠も見つかったからよしとしておく。
で、ロマリア王に返しに来たんだが・・・

   

   

   

「えっ?えっ?え・・・」
戸惑うアリス。当たり前だ。
どこの国に勇者と言えど旅人に王位を譲る国王がいるってんだ。
「アリス殿ほどの美人ならドレス姿もさぞ美しいんじゃろうな。」
それが目的かよ。
「おっ、いいねぇ。俺もアリスちゃんのドレス姿見た〜い。」
賛同してるやつがいるし・・・
「えっと・・・。」
国王とカルトが何故か意気投合したもんで、アリスがますます困り果てていた。
服の裾を引っ張られる感じがして後を振り返ると、
「ラヴィさん、助け舟ださなくていいんですか?」
・・・ったく、結局オレか。
嘆息しつつアリスに近寄ると、オレに気づいたアリスが振り返り、
「ラヴィちゃんも王様の格好する?」
「はぁっ!?」
いきなり何を言うんだ?
「それはいい!イルもお姫様の格好しろよ。こんな機会またとないぜ。」
とノリノリで言うカルトはどうやら王子の格好をするらしい。
「イルもですか〜?」
・・・って、なんでそんな話になってるんだ?
状況が飲み込めないってのに、メイド達がわらわらとやってきてオレ達をそれぞれ別室へ連れて行った。

ちょっと待て!なんでオレまで!

   

   

   

・・・・・・・・・。

王様の衣装だっていうから、てっきり重そうな赤ローブを羽織らされるのかと思ったんだが・・・。
生地は上等な絹。光沢があり華美になりすぎない程度の刺繍が施されている。
スラッとしたパンツスタイルは、王様っていうより貴族って感じなんだが・・・。
「それはわしが后に求婚するときに着たやつじゃな。わしの若い頃にそっくりじゃ。」
・・・うそつけ。
それはどうでもいいんだが、生地に光沢があるせいでオレの銀の髪が同化してる気がするんだが・・・
遠目に見たらオレ、シルバーマンじゃないか?

「わっ、ラヴィちゃん・・・かっこいい。」
その声に扉の方に目を向ければ・・・・・・。
「おお!アリス殿!やはり思ったとおり美しい!」
とロマリア王は両腕を広げてアリスの元に行くと、国王ともあろう者がアリスの前で跪き、手を取るとその甲に口づけた。
・・・っていいのかよ?
「わっ、わっ、わっ。」
「やはり美しい女性は目の保養になるのぉ。そう思わぬか?ラヴィラット殿。」
「あ、っと・・・。」
突然話を振られ、どもるオレは完全に動揺していた。
姿現したアリスのドレスは胸元が大きく開いており、腰が大きく膨らんだクリノリンのスカート。露出した肩が寒そうだがショールを羽織っていた。パステルカラーのドレスと黒髪を調和させるように胸元には青い宝石のネックレス。短くなった髪をどういじったのかは知らないが後でまとめられているようだ。化粧もされたみたいで・・・。
「えっと・・・似合うかな?」
と上目遣いに聞いてくるアリスにオレは、
「う・・・ま・・・いいんじゃ、ないか・・・。」
その言葉で満足したのか「えへへっ。」と笑うアリス。

アリアハンを出てからシャツにパンツにブーツとマントの旅スタイルだったもんだから、それに目が慣れていて、こう女らしい格好をされると・・・
まぁ、昔からアリスは周りからかわいいと言われてたわけで・・・
っていかん。歯が浮いてくる。

「わー、アリスちゃんキレイですー。」
と感激した声をあげるのはイル。
・・・・・・。
「ってなんでメイド服なんだ?」
そう、お姫様の格好をすると出て行ったイルは何故か他のメイドが着てる服と同じやつを着ていた。
「その、イル様は小柄でして・・・。」
とイルを連れて行ったメイドが言う。
アリスも小柄な方だが、イルは更に小柄だった。
・・・サイズがなかったのか。
「だからってなんでメイド服を・・・。」
「ラヴィさん、知らないんですか?メイド服流行ってるんですよ。萌えです。」
拳を作って力んでそう言うイル。
なんだよ萌えって・・・。

「うんうん。こうして見るとコスプレ大会だな。」
とオレ達を見て頷く国王。
コスプレさせた張本人が何を言う。
残るはカルトだけなんだが・・・。

「嫌だー!こんな格好で出てきたくねー!」
「何をおっしゃるのですか、せっかく王子の衣装をお着になったというのに。」
と扉の外からカルトとメイドの声が聞こえた。
「カルトくん、どうしたんだろ?」
と首を傾げるアリス。
「イル、見てきまーす。」
とメイド姿のイルがタッタッタと扉に向かい、バンッと扉を開けた。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
メイドと取っ組み合いをしていたカルトと目が合った。
「み、見るなー!俺を見るなー!」
カルトはメイドを振りほどくと脱兎のごとくどこかに走り去っていった。
カルトの去った方を見て膨れっ面になったメイドが、
「王子といったらカボチャパンツだというのに、何が気に入らないのかしら。」
この国の王子は白タイツにカボチャパンツなのか・・・
オレはカルトに同情したが、自分がそれを着ずに済んでよかったと安心していた。

   

いつもの服に着替えて戻ってきたカルトに、
「カルトくん、カボチャパンツ似合ってたよ。」
とアリスがフォローを入れるが、カルトはそれに涙を流していた。

   

あとがきまがい

うん、こいつら楽しい(笑。
リューイに行き詰まってたから余計に書くのが楽しかった。
3話目にしてようやくキャラが固まった感じがする。
カルトはギャグ担当になりそうだ(笑

2007.05.11

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